お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「事情は大体、分かりました。疑ってしまい、申し訳ございません」

 潔く頭を下げ、謝罪するルーシー嬢は精一杯の誠意を示した。
かと思えば、厳しい目でこちらを見つめる。

「それはそれとして、具体的にいつ頃から監視を?」

「えっと、野外研修のあとかな?」

 あまりの切り替えの速さに若干たじろぎながらも、私は何とか返答した。
すると、ルーシー嬢はしばらく黙り込み……急に『ん”ん……!』と声を漏らす。

「嗚呼、もう……!アレとか、ソレとか全部聞かれていたのかと思うと、めっちゃ恥ずい!」

「なんか、すまないね」

 ただ謝ることしか出来ない私に対し、ルーシー嬢は真っ赤な顔を向けた。
かと思えば、八つ当たり気味にこう叫ぶ。

「てか、まず何で監視なんてしていたの……ですか!?」

「いや、妙にコソコソしているからつい気になって……でも、私自身ここまで長く監視するつもりはなかったんだよ。だけど、魔王とか世界滅亡とか言われたら放っておけないだろう?」

「なら、せめて言って……くださいよ!何でずっと黙っていたんですか!?」

「いや、前世の話も聞いちゃったからどうも言い出しにくくて……」

 それに魔王のことは私達に相談する流れになっていたから、わざわざ言わなくてもいいかと思ったんだ。

 とはさすがに言えず、ひたすら謝罪を繰り返した。
が、ルーシー嬢の反発は凄まじく……三十分くらい、説教される。
そして、『盗み見はもうしない』という確約を取り付けると、ようやく態度を軟化させた。
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