お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『しっかり償わないと』と決意し、私は顔を上げた。
と同時に、明るく笑う。

「大丈夫です。『いつか、こうなる日が来るだろうな』とは、考えていましたから」

 『心の準備は出来ています』と語る私に、レーヴェン殿下は大きな溜め息を零した。
呆れたような……でも、ちょっと残念そうな表情を浮かべ、自身の手を見つめる。

「……結局、ダメだったか」

「えっ?」

「いや、何でもないよ。こっちの話」

 『気にしないで』とでも言うように肩を竦め、レーヴェン殿下は手を引っ込めた。
どうやら、説得は諦めたらしい。

「君の意見はよく分かった。私はそれを尊重しよう。ただし、これだけは忘れないで」

 どことなく凛とした眼差しをこちらに向け、レーヴェン殿下は居住まいを正す。

「私は君の味方だよ。辛くなったら、いつでも目で合図して。間に入るから」

 話し合いにはレーヴェン殿下も同席することになっているのか、サポートを約束してくれた。
『一人じゃないからね』と断言する彼に、私は表情を和らげる。
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