お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「とても、心強いです。ありがとうございます」

 孤立無援じゃないと分かっただけで、心は随分と軽くなった。
程よい安心感に包まれ、肩の力を抜く中────ルーシーさんが席を立つ。
何やらずっと考え込んでいた様子の彼女だが、結論を導き出したらしい。
なんだか、吹っ切れた顔をしていた。

「リディア」

「はい」

「私、貴方のカミングアウトに合わせて────自分の前世も言う」

「……えっ?」

 あまりにも唐突すぎて反応が遅れたものの、私は何とか言葉の意味を理解する。
が、当然納得は出来なかった。

「な、何でですか……?」

「私も一緒に暴露すれば、周囲の関心は分散されるでしょ。それにこの時を逃したら、多分一生バラせないと思うし……」

 『後になればなるほど言いづらい』と零すルーシーさんに、私は一瞬共感を覚える。
でも、それとこれとは別問題だった。

「別にバラす必要はないのでは?ルーシーさんの場合は転生で、他人の体に乗り移った訳じゃありませんし」

「それはそうだけど……いつか、バレるかもしれないじゃん」

「恐らく、言わなければバレないと思いますが」

「そこに居る腹黒皇太子を見ても、同じことが言える?」

「……」

 促されるままレーヴェン殿下に視線を向け、私は額を押さえる。
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