お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 そうだった……この人、自力で私達の秘密を暴いたんだったわね。
まあ、本人に悪気はなかったみたいだけど。

 『偶然の産物らしいから』と考えつつ、私は頭を悩ませる。
実際に秘密の内容を突き止めた人物が居る以上、『バレない』とはとても断言出来なくて……。

「すまないね、なんか……」

「いえ……」

 気まずそうに身を竦めるレーヴェン殿下に、私は曖昧な笑みを返す。
そして、この場に何とも言えない空気が流れる中────ルーシーさんはズイッと顔を近づけてきた。

「じゃあ、逆に聞くけどさ────リディアは同じ前世持ちの子が糾弾されているのに、知らんぷり出来る?」

「それは……出来ませんね、多分」

 口が裂けても『出来る』とは言えず……ささやかな抵抗として、『多分』を付け足した。
が、ルーシーさんは見事スルー。
『そうでしょ!』とでも言うようにコクコクと頷き、身を起こした。
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