お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 おっと……?さすがに怒ったか?

 どことなく険しい顔つきの幼馴染みを見て、俺は身構えた。
『怒号と蹴り、どっちだ!?』と思案する中、ニクスは────

「……リディアの件、お前はどう考えている?」

 ────と、質問を投げ掛けてくる。
予想と全く違う反応を示す幼馴染みは、神妙な面持ちでこちらを見据えた。

「僕は事実だと思っている。というのも────六歳の頃から、明らかに様子が変わったから」

「!!」

 『六歳』と聞いて、俺は一瞬胸を高鳴らせてしまった。
だって、もしそうなら俺の見てきたリディアは同一人物で……偽物じゃないから。
もちろん、俺からすればの話だが。
『家族のニクスは絶対複雑だよな』と気に掛ける中、幼馴染みはカチャリと眼鏡を押し上げる。

「最初は『単なる心境の変化だろう』と思っていた。でも、よく考えてみればおかしい。僕も幼少期のリディアを詳しく知っている訳じゃないから、確かなことは言えないが……昔は本当に暗くて、無表情で、冷たかったんだ」

 ……なあ、それ自己紹介か?
『暗い』以外は、全部ニクスにも当てはまるんだけど……。
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