お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

学園祭の後片付け

◇◆◇◆

「ねぇ、リディア。この衣装、どうする?」

 そう言って、ルーシーさんはローブと仮面をヒラヒラと振った。
その後ろで、クラスメイトの男子達が大道具や小道具を運び出していく。
『これは処分?寄贈?』と質問し合う彼らは、学園祭の後片付けに集中していた。

「ルーシーさんは、どうされるんですか?」

「私はとりあえず、記念に貰っておこうかな〜って思っている。場合によっては、このまま処分されちゃうみたいだし。それはさすがに勿体ないじゃん?」

 小脇に抱えたドレスを見つめ、ルーシーさんは『もう着る機会なんて、ないと思うけど』と苦笑。
もしこのまま聖女になれば普段着はもちろん、式典やパーティーの衣装も決められているため、観賞用になる未来しか見えないのだろう。
でも、思い出の品としての価値は計り知れないもので……取っておきたい気持ちはよく分かった。
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