お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「では、私も同じようにします」

「オッケー。じゃあ、レーヴェンにそう伝えてくるわー」

 ステージの上に立つ銀髪の美青年を指さし、ルーシーさんはさっさとこちらに背を向ける。
『また後でね』と手を振る彼女に、私はペコリと頭を下げた。

 さてと、私も仕事に戻ろう。

 人で溢れ返った一階のホールを一瞥し、私は手元の資料に視線を落とす。
学園から借りた物品のリストを前に、私はクラスメイトへ指示を出した。
公爵令嬢という立場上、雑用などはやらせてもらえないため。
何より、レーヴェン殿下に全ての指揮を任せるのは少々無理があった。

 まあ、こうやって振る舞えるのも今日で終わりかもしれないけど。
何故なら、明日────皇城にて、憑依のことを話すことになっているから。

 皇帝陛下や両親からの手紙を思い浮かべ、私はそっと眉尻を下げる。

 両者とも、『とりあえず、話を聞きたい』というスタンスだったけど、内心はどう思っているのかしら?
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