お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 もう腹を括ったとはいえ、不安の尽きない私はキュッと唇に力を入れる。
『最悪、勘当や投獄も有り得るのかな』と考えながら、自分の役割をこなした。
そうこうしている内に後片付けは終わり、

「皆、本当にお疲れ様。もう帰っていいよ。明日から学園は三日ほど休みだから、しっかり体を労わってね」

 と、レーヴェン殿下のお言葉を頂き解散した。
ゾロゾロとホールから出ていくクラスメイト達を前に、私も一旦寮へ戻ろうとする。
────と、ここで両肩に手を掛けられた。

「リディア、ちょっと来い」

「明日の話し合いの前に、伝えたいことがある」

 聞き覚えのある声に導かれ、後ろを振り返ると────そこには、案の定兄とリエート卿の姿があった。
時間を置いたおかげか、二人は随分と落ち着いており概ねいつも通りに見える。
ただ、表情は若干強ばっていた。
やはり、緊張しているのだろう。

 あんなことがあった直後だものね。
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