お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「いや、覚悟って……もしかして、俺達めちゃくちゃ警戒されている?」

「……チッ」

 嘆くリエート卿に反して、兄は苛立たしげに眉を顰めた。
が、一度深呼吸して気持ちを落ち着ける。
さすがにここで怒鳴り散らすのは不味い、と判断したようだ。

「そんなに心配なら、殿下達もついてきてもらって構いません。見られて困るようなことは、何もないので」

「……なら、お言葉に甘えて」

「遠慮なく」

 兄達の態度を見て思うことがあったのか、ルーシーさんとレーヴェン殿下は提案を受け入れた。
さっきまで、接触そのものを警戒していたのに。
少しばかり肩の力を抜く二人の前で、兄とリエート卿は歩き出す。
行き先は案の定とでも言うべきか、生徒会室だった。

 何故だか、とても懐かしい気持ちになるわね。
昨日だって、ここへ来たのに。
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