お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「おい、リエート。お茶を淹れて来い。こんなに涙を流したら、そのうち脱水症状になる」

 『早く水分補給させなければ』と言い、兄は心配そうにこちらを見つめた。
以前と変わらぬ愛情を注いでくれる彼の姿に、私はつい笑みを漏らしてしまう。
本当に凄く嬉しくて。

 私、ここに居てもいいのね。

 一度は『戻れない』と諦めていた筈の居場所が手に入り、私は目を細める。
場合によってはまた失うことになるかもしれないが、それでも今はこの結果を……皆の気持ちを大事にしたかった。
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