お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『いつか、リディアと恋バナしたいな』なんて考えていると、ルーシーさんが腰に手を当てる。

「それで、レーヴェンルートの場合は────皇太子妃になり、家に貢献したかったからだと思います。その上で、ヒロインという存在は凄く邪魔だったのかと」

「私だけ、随分と淡白な理由だね」

 『ちょっと残念』とでも言うように、レーヴェン殿下は肩を竦める。
────と、ここでノクターン皇帝陛下が顔を上げた。

「説明感謝する」

「いえ、こちらこそご清聴ありがとうございました」

 胸元に手を添えてお辞儀するルーシーさんは、ゆっくりとソファに腰を下ろす。
『話は以上だ』とでも言うように。
再び静かになった室内を前に、ノクターン皇帝陛下は顎に手を当てた。

「とりあえずルーシー嬢の虚言についてだが、こちらも不問とする。多少問題はあるが、実際未来を知っている訳だからな。もしかしたら、前世を覚えていること自体が『光の乙女』の能力によるものかもしれん。罰するには、いささか無理がある」

 無罪放免を言い渡すノクターン皇帝陛下に、私はパッと表情を明るくした。
『良かった!』と自分のことのように喜びながら、安堵の息を吐く。
もし、重い罰を与えられていたら罪悪感で胸が押し潰されそうになっていただろうから。
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