お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「それを知った時はバグか何かかと思ったけど、学園長のギフトの件を聞いて……もしかしたら、リディアは────自分のギフトを一つあげる代わりに、憑依のことについて教えてもらったのかもって考えていて……」

「そんなこと可能なのか……?」

「分かりません。ただ────魔王の持つギフトに、それらしいものが……」

 呆然とする兄を見据え、ルーシーさんはグッとスカートを握り締めた。
かと思えば、こう言葉を続ける。

「会議でも何度か話しましたけど、魔王の持つギフトは全部で三つ────『超進化』『不老不死』『等価交換』。で、個人的にはこの『等価交換』が怪しいんじゃないかな〜?と踏んでいます」

 軽快な口調とは裏腹に緊張感を漂わせ、僅かに表情を強ばらせる。
いつになく口元に力を入れ、ルーシーさんは桜色の瞳に憂いを滲ませた。

「公式ファンブックでは、『両者が同じ価値だと定めたものを、何でも提供し合うことが出来るギフト。ただし、自分の所有物に限る』って書かれていました。つまり、自分の所有物であるギフトも効果対象に含まれるかも?ってことで……」

「「「!!?」」」

 これでもかというほど大きく目を見開き、兄達は唖然とした。
しばらく何もない沈黙が続き、各々肩から力を抜いていく。
到底信じられない話のため、上手く呑み込めないようだ。
『ギフトを提供し合うなんて、普通は有り得ないものね』と思案する中、兄はそろそろと視線を上げた。

「いや、仮にそうだとして……当時のリディアは六歳だろう?まだ洗礼式を受ける前じゃないか」
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