お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あ、あの……リディアは多分、相手が魔王だって知らなかったんだと思います。知っていたら、取り引きなんてしなかったかと……」

「何故、そう言い切れるんだ?君は本物のリディア嬢と話したことなどないだろう?」

「それは……そうですけど、でも────リディアは自分の大切な家族を傷つけれるかもしれない存在に、手を貸したりしません」

 確かに私はリディアと話したことも、顔を合わせたこともない。
ただ、使用人から過去の話を聞いたりリディアの痕跡を見つけたりする度、『嗚呼、この子は本当に愛されたかっただけなんだな』って思う。
だって、家族と関係のあるものは全て大切に扱っていたから。
これほど純粋で真っ直ぐな子が、魔王の手に落ちるとは考えにくい。

「私はリディアのことを信じます」

 王様相手に無礼かもしれないが、ここだけは譲れなくて……しっかりと自分の意見を述べた。
すると、ノクターン皇帝陛下はもちろん……両親や兄まで目を剥いて固まっている。
ここまでハッキリ物押すことは少ないので、かなり衝撃を受けているようだ。
『ちょっと言い過ぎたかしら……?』と不安に思っていると、ノクターン皇帝陛下がスッと目を細める。
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