お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「私達のもう一人の娘(・・・・・・)として生きてくれ、アカリ」

 正式に家族として迎え入れたいと申し出る父に、私は気づいたら

「はいっ……!」

 と、首を縦に振っていた。
何とも言えない高揚感と幸福感に包まれながら、私はポロポロと涙を流す。
はにかむような笑顔と共に。

 ────その後の食事は和やかに進み、あっという間に帰宅時間へ。
門限ギリギリに学園へ着き、晴れやかな気持ちで両親と別れた。
『送っていく』という兄の言葉に甘えて寮まで向かう途中、彼はふと足を止める。
と同時に、こちらを振り返った。

「リディア……いや、アカリ」

「はい」

 とりあえずこちらも立ち止まって応じると、兄は少し言い淀むような動作を見せる。
が、それはほんの一瞬で……直ぐに覚悟を決めた。

「話しておきたいことがある。お前には、僕の本音を知っていてほしいから」

 お兄様の本音……それって、きっと憑依関連よね?
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