お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 天国に居るであろうリディアのことを思い浮かべ、私は目に滲んだ涙を瞬きで誤魔化す。
と同時に、溢れんばかりの笑みを零した。

「もちろんです、お兄様」

 『むしろ、大歓迎』と示し、私はうんと目を細める。
すると、小公爵……いや、兄はホッとしたように胸を撫で下ろした。

「ありがとう」

「いえ、こちらこそ。お兄様の妹になれて、とてもとても嬉しいです」

 喜びのあまり声を弾ませる私に対し、兄は『……そうか』と相槌を打つ。
まだ兄妹のやり取りに慣れていないのか、はたまた恥ずかしいのか対応は少しだけぎこちなかった。
でも、一生懸命家族として接しようとしているのは分かる。
『それだけで、私としては嬉しい』と頬を緩める中、両親が安堵の息を吐いた。
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