お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「はい、行ってきます」

 『信じて待つ』と示してくれた彼らに挨拶し、私はクルリと身を翻した。
緊張で強ばる体に鞭を打ちながら洞窟へ入り、奥を目指す。
何故なら、ここを住処としている者────聖獣に会わなければならないから。

 聖獣とはその名の通り、聖なる動物のこと。
基本俗世のことには無関心で、あまり干渉してこない。
ただし、神の代理人とも呼ばれる『光の乙女』の所持者には強い関心と敬愛を抱いていた。
というのが、ゲームの設定。

 一応、シナリオ通りに行けば聖獣はヒロインのことを気に入って色々世話を焼いてくれるんだけど……多分、私じゃ無理だろうな。
だって、ヒロインに好感を抱いた理由が────純粋で清らかな心を持っているため、だったから。
自分で言うのもなんだけど、私はそういうタイプじゃないし……ヒロイン並の高待遇は期待出来ないと思う。
恐らく、『光の乙女』所持者に渡さないといけないアイテムだけ渡して、直ぐに追い返すんじゃないかな?
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