お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「聖獣はさ、その堅苦しい性格を直した方がいいよ。誰も居ない空間に二十〜三十年ほど閉じ込められば、ちょっとは頭が冷えるんじゃない?」

 杖の先端を聖獣に向け、私は『どう?』と尋ねる。
その途端、あちらは一気に青ざめた。
というのも、このアイテムの効果が────あらゆるものを封印出来る、というものだから。
たとえ、杖を守る存在である聖獣であろうと例外ではない。

 聖なる杖がこっちの手に渡った時点で、貴方は詰んでいるの。
大人しく、諦めたら?

「平凡だろうとなんだろうと、『光の乙女』の所持者である以上、私もこの杖を使える。それは分かっているよね?」

 使い方もゲームを通して既に熟知しているため、抜かりはない。
『久々に転生者チートを使った気分』と浮かれる中、聖獣はピタリと足を止めた。
かと思えば、突然泣き崩れる。

「神よ〜〜〜!何故、彼女のような性格破綻者を聖女にしたのです〜〜〜!?」

 いや、『性格破綻者』って……そりゃあ、歴代の聖女やゲームのヒロインに比べればめちゃくちゃ性格悪いけど、ちょっと言い過ぎじゃない!?
てか、ガチ泣きじゃん!
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