お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「そうだよ。こういう時こそ、いつも通りに振る舞わないと」

 顔の上半分を隠している仮面を外し、レーヴェン殿下はニッコリと微笑んだ。
その際、紫色のピアスと緑色のローブが小さく揺れる。
三つとも隠密に長けたアイテムで、魔力の流れを隠したり、気配を薄くしたりすることが可能。
さすがに姿が見えなくなるレベルの代物ではないものの、注視しておかないと直ぐにレーヴェン殿下の姿を見失うため不意打ちなどに有効だった。

「ヲタクの血が騒ぐのは、仕方のないことなんですよ。それにゲームと違って、朱里も居るし」

 極普通の白いローブに身を包み、聖なる杖を手に持つ麻由里さんはこちらへ視線を向けた。
と同時に、妖精結晶で出来た赤いブレスレットがキラリと光る。
ギフトの効果を上げるというソレは、他のメンバーにも支給されておりお揃いにしていた。
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