お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「そろそろ、時間だね」
開始時刻である十二時を示す針に、麻由里さんはスッと目を細めた。
その途端、辺りは一気に静まり返る。
先程までの楽しい雰囲気は消え去り、重苦しい緊張感が私達を包み込んだ。
────と、ここで兄が席を立つ。
「……青の信号弾だ。行くぞ」
開戦の合図である青い光があちこちから上がり、兄はこちらに手を差し伸べた。
そこに迷いはなく……実に淡々としている。
本当は不安でしょうがないだろうに……だって、今頃────父やクライン小公爵が魔物と戦闘を繰り広げているため。
魔王の戦力を削ぎ、少しでも私達の負担を減らすというのが目的で。
魔王単体でも厄介なのに、魔物の軍勢も一緒に相手するとなると尚更大変だからね。
お父様達はこれくらいしか、出来ないことを随分と悔いていたけど……。
『無理していないといいな』と思いつつ、私は兄の手を取った。
と同時に、立ち上がる。
開始時刻である十二時を示す針に、麻由里さんはスッと目を細めた。
その途端、辺りは一気に静まり返る。
先程までの楽しい雰囲気は消え去り、重苦しい緊張感が私達を包み込んだ。
────と、ここで兄が席を立つ。
「……青の信号弾だ。行くぞ」
開戦の合図である青い光があちこちから上がり、兄はこちらに手を差し伸べた。
そこに迷いはなく……実に淡々としている。
本当は不安でしょうがないだろうに……だって、今頃────父やクライン小公爵が魔物と戦闘を繰り広げているため。
魔王の戦力を削ぎ、少しでも私達の負担を減らすというのが目的で。
魔王単体でも厄介なのに、魔物の軍勢も一緒に相手するとなると尚更大変だからね。
お父様達はこれくらいしか、出来ないことを随分と悔いていたけど……。
『無理していないといいな』と思いつつ、私は兄の手を取った。
と同時に、立ち上がる。