お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「お願いします、神様……もう解放してください」

 そう言うが早いか、僕は頸動脈を切り────死に至った。

 これだけ尽くしたんだ。神様だって、分かってくれる。僕の願いを聞き入れてくれる。

 ────と思ったのに、現実は違っていて……僕はまた転生してしまった。
しかも、今までの記憶をしっかり引き継いで。

 いや、落胆するのはまだ早い。もしかしたら、平凡な子供として生きていけるかもしれない。

 そんな淡い希望を胸に七年間過ごし、洗礼式を受けた。
と同時に、絶望した。
だって、僕の持っていたギフトの中に『不老不死』があったから。
これでは、平坦な人生を歩むことなど不可能だろう。

「神は僕にこの世界で一生、英雄であり続けることを望むのか……」

 『なんてことだ』と嘆き、僕はその場に蹲った。
重すぎる周囲の期待と神の無情さを痛感しながら、自室のベッドに顔を埋める。
『もう勘弁してくれ……』と絞り出すような声で言い、ひたすら自分の運命を呪った。
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