お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 そういう訳で、『不老不死』の譲渡は不可能に近く……三つ目の選択肢を取らざるを得なかった。
それが────世界滅亡。
通常、ギフトなどの能力は世界に帰属する。僕が前世の力を引き継げなかったのも、そのため。
だから、世界を壊してしまえば『不老不死』の効果はなくなり、死ねるんじゃないかと考えた。

「世界を滅ぼせば、当然ここに住む人間や動物も死ぬ……」

 自室の窓から街を行き交う人々やキャンキャン吠える犬を眺め、僕はそっと目を伏せる。
元英雄として、無関係の者達を巻き込むことに多少なりとも罪悪感はあるから。
でも、それ以上に────死にたい気持ちの方が大きい。

「世界を跨いだ心中計画か……我ながら、狂っている。だけど、もう僕にはこれしかないんだ」

 分かってくれ、とは言わない。許しを乞う気だって、なかった。
ただ、もし気の毒だと思うのならば────僕を心の底から憎んで、恨んで、殺してくれ。
それが唯一の救いであり、願いであり、慰めだから。
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