お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「君達、どうしてここに……」

 呆然とした様子で彼らを見つめ、魔王はたじろぐ。
ここに来てようやく揺らぎ始める彼に、死者達は構わず詰め寄った。

「魔王って、どういうことだよ!?何でそんな選択をしたんだ!」

「疲れたから休みたい気持ちは、分かるわ!でも、やっていい事と悪い事があるでしょう!」

「大体、そんなに悩んでいるなら相談してよ!私達、仲間じゃないの!?」

「どうして、いつも一人で溜め込むんだ!俺達はお前にとって、頼りない存在なのか!?」

「えっと……」

 四方八方からお叱りを受ける魔王は、オロオロと視線をさまよわせる。
さすがの彼も、かつての仲間や友人に説教されるのは堪えるらしい。

「ぼ、僕は……」

「私達と過ごした時間は苦痛だった?」

 少し悲しそうな表情を浮かべ、茶髪の美女は魔王の頬に手を添える。
と言っても、透明なので実際には触れていないだろうが。
でも、何となく温もりは感じられている筈。
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