お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 さすがにもう世界の滅亡は考えていないと思うけど……。

 かつての仲間や友人達に囲まれてバツの悪い顔をしている魔王に、私はスッと目を細める。
『もうあのギフトを使うしかないかな?』と考えながら、兄の背中越しに魔王を見た。

「分かりました。では、こうしませんか?私が必ず、貴方に死を提供します」

「朱里……!」

 そう言って、勢いよく私の腕を引っ張ったのは────麻由里さんだった。
きっと、私のしようとしていることに気づいたのだろう。
彼女は乙女ゲームの知識を通して、私のギフトの能力を知っている筈だから。
『危険だ!』と視線だけで訴え掛けてくる彼女に、私はニッコリ微笑む。
大丈夫ですよ、と伝えたくて。

「私の……リディアの持つギフトの中に『共鳴』というものがあります。これはギフト所持者の状態に、対象を同調させるというもの。つまり────私が死ねば、このギフトの影響を受ける者も死ぬのです」

「「「!!?」」」

 魔王だけでなく、幽霊となって現れた者達や兄達もハッと息を呑んだ。
かと思えば、物凄い勢いで詰め寄ってくる。
< 561 / 622 >

この作品をシェア

pagetop