お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「魔王のために死ぬつもりか!?そんなのダメに決まっているだろう!」

「考え直しておくれ、アカリ……!」

「他にも何か方法がある筈だ!」

「そうよ!まだこんなに小さい子が、自己犠牲なんて覚えちゃダメ!」

「ハデスのために動いてくれるのは有り難いが、こんなの……!」

 『共鳴』を使ったから即死ぬつもりだとでも思っているのか、彼らは何とか思い留まらせようと必死だった。
焦ったように表情を怖ばせる彼らの前で、私は少しばかり戸惑う。

「お、落ち着いてください、皆さん。私は別に自害するつもりなんて、ありません。ただ、魔王の寿命と私の寿命をリンクさせるだけです」

 リディアから貰った第二の人生を投げ出すなんて、有り得ないわ。
ちゃんと最後まで生き抜きたい、と思っている。
だから、魔王の願いを叶えるのは“今”じゃない。
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