お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「チッ……!こうなったら、魔法や剣も使って全力で止めに行くぞ」

「ああ。多少手荒になってもしょうがないな、これは」

「そうだね。でも────まずはコレをどうにかしないと、ダメかな」

 コツンッと半透明の壁を叩き、レーヴェン殿下は苦笑を漏らす。

「いつの間にか、結界で閉じ込められてしまったようだ」

「アカリでも苦戦する結界となると、破壊するのは骨が折れますね」

「んじゃ、いっそ俺のギフトを使うか?」

 『今こそ、聖剣の出番だろ』と言い、リエート卿は自身の手首に噛み付く。
そして自身の血を地面に垂らすと、何やら呪文を唱え────真っ白な剣を顕現させた。
ソレで結界を切り、無事脱出。私の方も何とか破壊してくれた。
これで全員自由の身である。
『とにかく、リディアのところへ!』と思い立ち、私は紫髪の美女の元に駆け寄った。
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