お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
取り引き《リディア side》
◇◆◇◆
────約十年前……まだ私が生きていた頃、漆黒を身に纏うあの人が急に現れた。
それも、寝る直前に。
「初めまして、リディア・ルース・グレンジャーだね?突然だけど、僕と────取り引きしないかい?」
カラスのような仮面を被り、ベッドの端に腰掛ける彼は明らかに異様な雰囲気を放っている。
この人、普通じゃない……!
瞬時にそう判断した私は、侍女を呼ぶためのベルへ手を伸ばした。
が、瞬きの間に男性がそちらへ先回りしてしまい……ベルを取り上げる。
これでは、助けを呼べない。
逃げる……?でも、あんなに俊敏に動ける人を撒くことなんて出来るのかしら?
『こうなったら、大声を出すしか……』と思案する中、彼はベッドの脇にある椅子へ腰を下ろした。
────約十年前……まだ私が生きていた頃、漆黒を身に纏うあの人が急に現れた。
それも、寝る直前に。
「初めまして、リディア・ルース・グレンジャーだね?突然だけど、僕と────取り引きしないかい?」
カラスのような仮面を被り、ベッドの端に腰掛ける彼は明らかに異様な雰囲気を放っている。
この人、普通じゃない……!
瞬時にそう判断した私は、侍女を呼ぶためのベルへ手を伸ばした。
が、瞬きの間に男性がそちらへ先回りしてしまい……ベルを取り上げる。
これでは、助けを呼べない。
逃げる……?でも、あんなに俊敏に動ける人を撒くことなんて出来るのかしら?
『こうなったら、大声を出すしか……』と思案する中、彼はベッドの脇にある椅子へ腰を下ろした。