お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「家族のこと、恨んでないのかい?」

 『普通、こんな扱い納得いかないと思うけど』と不思議がる彼に、私は曖昧な笑みを浮かべる。

「訳も分からず冷遇されるのは、まあ……確かに不満ですけど、恨んではいません。私の場合、どちらかと言うと────愛されたい思いの方が強いですから」

 そっと胸元に手を添え、私はスッと目を細めた。
すると、男性は難しそうな顔つきでこちらを見つめる。

「ふむ……となると、精神感応系の魔法で家族を洗脳するしか……」

「いえ、そういうのも結構です。心から愛してくれないと、意味ないですし……虚しいだけです」

 『偽りの愛なんて要らない』とバッサリ切り捨てる私に、男性は一つ息を吐く。

「純粋な子供は無欲でやりづらいな」

 独り言のようにそう呟き、男性はやれやれと(かぶり)を振った。
かと思えば、少しばかり身を乗り出す。
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