お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 こっちの流行はもちろん、ドレスの勝手もよく分からないから。
普段は侍女の選んだものを着用しているだけだし……。
正直、変なものを選ぶ可能性があるため、お母様とお兄様に任せるのが妥当だと判断した。
リディアだって、家族の選んだドレスを着てみたいだろうし。

 『せっかくの美人さんなのだから、ちゃんと着飾りたい』という想いの元、私は静かに待機する。
そして、向かい側の席に並んで腰掛け、ドレスを選んでいる母と兄に目を向けた。

「う~ん……リディアは大人っぽいから、落ち着いた色の方がいいわよね」

「そうですね。あと、リボンやレースは極力避けた方がいいかもしれません。リディアはガーリーなものより、シックなものの方が似合いと思うので」

「あら、よく分かっているわね。さすが、ニクス。ただ、子供っぽさは残したいからプリンセスラインのドレスにしましょうか」

 リディアに対する印象が全く一緒なのか、二人は直ぐにドレスのイメージを固めた。
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