お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 息をするのも億劫で仕方ないこの日常に、私は限界が来ていたことを悟る。
家族への愛情だけじゃ成り立たくなってきた生活を考え、半ば放心した。
泣きたいような……喚きたいような衝動に駆られる中、男性は居住まいを正す。

「それは死にたいってこと?」

「いいえ、違います」

 死んだら必ずその原因を調べることになるし、その結果自殺だと判明すれば家族は責任を感じるかもしれない。
少なくとも、お母様はショックを受ける筈……。
事故死も同様よ。『自分達がもっと気に掛けていたら』と思うだろうから。

 『殺人の場合はもっと厄介になるし……』と考えていると、男性が少しばかり頭を捻る。

「それじゃあ、家出?」

「そちらも不正解です」

 家出なんてすれば、間違いなく大騒動になるし……これまた、家族が責任を感じる筈。
何より、色んな人に迷惑を掛けてしまうわ。
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