お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「分かった。じゃあ、こうしようか。君からギフトを一つ貰う代わりに、僕は憑依に関する知識を与える。憑依方法も含めて、知っていること全部教えよう」

「!!」

 ハッとして顔を上げる私は、強く胸元を握り締める。

 それなら使うかどうか悩む時間が出来るし、たとえ使わずに終わったとしてもこちらに損害はない。
彼の言う通り、ギフト複数持ちなら一つ奪われても問題ないだろうから。
少なくとも、洗礼式で『ギフトを持っていない!もしや、悪魔か!?』と騒がれる心配はない筈。

 ゴクリと喉を鳴らし、私は表情を引き締めた。

「念のため、確認ですが……憑依は私単体でも出来るんですよね?」

 『貴方が居ないと使えないみたいな制約はないか』と尋ねると、男性はクスリと笑みを漏らす。

「抜かりないね、君は」

 半ば感心したようにそう呟き、彼はおもむろに席を立った。
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