お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「────これに免じて、憑依などという邪法を使ったことには目を瞑ろう」

 という言葉を置いて。
ポツンとこの場に取り残された私達は顔を見合わせ、辟易する。

「あの猫さんはもしかして……もしかしなくても────神様、ですかね?」

「多分、そうじゃない?この展開で、神様以外だったら逆に怖いし」

「でも、そうなると神様はずっと魔王の様子を見守っていたことになるよな……」

「『なら、止めてくれ』って、話なんだが……まあ、何かしら事情があったんだろう」

 どこか遠い目をしながら、兄は『はぁ……』と溜め息を零す。
呆れとも落胆とも捉えられる態度を取る彼の横で、レーヴェン殿下が小さく肩を竦めた。
かと思えば、こちらに目を向ける。

「とりあえず、帰ろうか────アカリ嬢、ゲートを」

 作戦成功を意味する青い光を空に打ち上げつつ、レーヴェン殿下は転移魔法の使用を求めた。
『疲れているかい?』と心配する彼に、私は小さく首を横に振り早速発動へ踏み切る。
イマジネーションで皇城の一室に座標を合わせ、ゲートを開くと────私達は全員無事に帰還した。
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