お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「ご苦労。楽にしてくれて構わない」

 片手を上げて私達の敬意に答えると、ノクターン皇帝陛下は手を組む。

「まずは戦勝パーティーに参加してくれたこと、心より感謝する。魔王討伐という記念すべき出来事を君達と祝えて、とても嬉しい。今夜は心行くまで楽しんでいってくれ」

 『無礼講だ』と宣言し、ノクターン皇帝陛下はゆるりと口角を上げた。
かと思えば、スルリと顎を撫でる。

「さて────今回の主役である英雄達は、前へ出てきてほしい」

 『君達の労をねぎらいたいんだ』と述べるノクターン皇帝陛下に促され、私達は玉座の前まで移動した。
無論、皇太子であるレーヴェン殿下も。
皆一様に跪き声掛かりを待つ中、ノクターン皇帝陛下は席を立った。

「見事魔王を討ち滅ぼした英雄達よ、どうか楽にしてほしい。私はただ、君達に礼を言いたいだけなのだ」

 『そんなに畏まる必要はない』と言い、ノクターン皇帝陛下は顔を上げるよう促す。
言われるがまま楽な体勢を取る私達の前で、彼は玉座の前にある段差をゆっくり降りた。
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