お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「我々デスタン帝国は歴史が続く限り、君達英雄に感謝し、その畏敬を示し続ける。これは未来永劫変わらない誓いであり、私ノクターン・ゼニス・デスタンの望みだ」

 心の底から感謝していることを示し、ノクターン皇帝陛下は立つよう指示する。
────と、ここで乾杯用のワインや果実水が配られた。
グラスに入った液体を前に、ノクターン皇帝陛下は周囲を見回す。
誰もがパーティーの開始を心待ちにする中、彼は

「英雄達の切り開いてくれた未来が、平和が永遠に続くことを願って────乾杯!」

 と、叫んだ。
グラスを高く持ち上げるノクターン皇帝陛下を前に、私達は『乾杯!』と復唱する。
その途端、会場内は一気に賑やかになり、音楽も始まった。
豪華絢爛と言うべきパーティーがスタートし、周囲の人々は笑みを零す。

「リエート様、リディア様。初めまして、私はウォール王国の第二王子です」

「魔王討伐、おめでとうございます。ところで、このあとお時間はありますでしょうか?」

「良ければ、一度我が国にお越しください。英雄様なら、いつでも大歓迎です」

 早速声を掛けてきた王族や貴族に、私とリエート卿はすっかり取り囲まれてしまった。
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