お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

最後くらい

 案の定とも言うべき展開に、私達は顔を見合わせて苦笑した。

「申し訳ございません、せっかくのお誘いですが……」

「お時間が出来ましたら、また後日連絡を……」

 無難な返答でやり過ごし、私達はそそくさと輪から離れる。
その際ふと辺りを見渡すと、ルーシー嬢やレーヴェン殿下も大人達に取り囲まれていた。
兄だけはシレッと撒いているが。
『さすがお兄様ね』と思いつつ、私はリエート卿と力を合わせて何とか逃亡した。

「ふぅ……何とか、躱せたな」

 目立たない壁際で一息つくリエート卿は、おもむろに前髪を掻き上げる。
が、『今日はセットしてもらったんだった』と零し、慌てて手を離した。

「ふふふっ。ちょっと乱れてますわ。直してもよろしいですか?」

「ああ、頼む」

 素直に助けを求めてくれるリエート卿に、私は小さく頷いた。
頼ってくれることを誇らしく思いながら手を伸ばし、オレンジがかった金髪に触れる。
半ば撫でるようにして乱れたところを整えると、リエート卿が少しばかり頬を赤くした。
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