お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
失恋と悲恋《ニクス side》
◇◆◇◆
振られたな、かなりバッサリと。
こちらの様子を気遣っているものの、瞳に迷いのなかったアカリを思い出し、僕は一つ息を吐く。
ひんやりとした秋風を受けながらバルコニーの手すりに掴まり、少し身を乗り出した。
この胸に燻る未練が夜の闇に溶けるように、と願いながら。
「────おや?先客かい?」
そう言って、僕の横に並んだのはレーヴェン殿下だった。
その隣には、マユリも居る。
どうやら、休憩がてら僕の様子を見に来たらしい。
「白々しいですよ、殿下」
「やっぱり、ニクスにはバレちゃうか」
「バルコニーの前で出てくるタイミングを見計らっていたのは、気づいていましたからね」
「おっと。それなら、そうと早く言ってよ。一生懸命セリフを考えていた私が、馬鹿みたいじゃないか」
やれやれと肩を竦め、レーヴェン殿下は『酷いな』と零す。
いつもより口数の多い彼を前に、僕は前髪を掻き上げた。
振られたな、かなりバッサリと。
こちらの様子を気遣っているものの、瞳に迷いのなかったアカリを思い出し、僕は一つ息を吐く。
ひんやりとした秋風を受けながらバルコニーの手すりに掴まり、少し身を乗り出した。
この胸に燻る未練が夜の闇に溶けるように、と願いながら。
「────おや?先客かい?」
そう言って、僕の横に並んだのはレーヴェン殿下だった。
その隣には、マユリも居る。
どうやら、休憩がてら僕の様子を見に来たらしい。
「白々しいですよ、殿下」
「やっぱり、ニクスにはバレちゃうか」
「バルコニーの前で出てくるタイミングを見計らっていたのは、気づいていましたからね」
「おっと。それなら、そうと早く言ってよ。一生懸命セリフを考えていた私が、馬鹿みたいじゃないか」
やれやれと肩を竦め、レーヴェン殿下は『酷いな』と零す。
いつもより口数の多い彼を前に、僕は前髪を掻き上げた。