お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 しんみりとした空気をぶち壊すように、マユリはダバーッと滝のような涙を流す。
『悲恋、つら!』とよく分からない言葉を発しながら、しゃくり上げた。

「あ〜〜〜!!!全員幸せになってよ〜〜〜!!!現実的に難しいのは、分かっているけどさぁ〜〜〜!!!これはこれでエモいけどさぁ〜〜〜!!!リアルで失恋や悲恋を目の当たりにすると、色々心に来るんだって〜〜〜!!!」

 バシバシと手すりを叩きながら、マユリは『クソ〜〜〜!!!』と叫ぶ。
周りに聞こえそうなのでやめてほしいが、自分達のために悲しんでいる友人を咎めるのはなんだか気が引ける。
当事者より泣いているマユリの扱いに困っていると、彼女は大きく息を吸い込んだ。
かと思えば、手すりから少し身を乗り出す。

「負けヒーロー達に幸あれ〜〜〜!!!」

 天まで届くような大声でそう叫び、マユリはブンブン手を振った。
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