お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「両想いとか、夢みてぇ……」

「ふふっ。大袈裟ですわ」

「いや、そんなことねぇーって。だって、ニクスがライバルだったんだぜ?」

 『超不安だった』と零し、リエート卿は手に擦り寄ってきた。
かと思えば、『現実だ……』と呟く。

「ぶっちゃけ俺さ、一生片想いする覚悟だったんだよ。俺はアカリしか有り得ないし……聖騎士だから、無理に恋愛する必要もなかったしな」

 想像よりも大きい愛情を示し、リエート卿はサンストーンの瞳をスッと細めた。

「だから、マジで嬉しい。俺を好きになってくれて、ありがとな」

「こちらこそ」

 『お互い様です』と笑うと、リエート卿はサンストーンの瞳に歓喜を滲ませる。
と同時に、私の手を一度引き離した。
『邪魔だったかな?』と思案する私を他所に、彼はテーブルをグルッと回ってこちらまでやってくる。
そして隣に腰を下ろすと、

「もう堂々と横に居ていいんだよな」

 と、しみじみ呟いた。
『どれだけ、この場所を欲したことか』と語りながら、リエート卿は私の手を持ち上げる。

「アカリ、本当に好きだ。愛している。俺とずっと一緒に居てくれ」

「はい」

 一瞬の躊躇いもなく頷くと、リエート卿は堪らずといった様子で私を抱き締めた。
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