お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

結婚式《ルーシー(麻由里) side》

◇◆◇◆

 ────魔王討伐から、早五年。
英雄と呼ばれた私達の人気も徐々に落ち着いてきた頃、朱里とリエートが結婚式を挙げた。
と言っても、身内だけ招待したこじんまりとしたものだが。
でも、二人らしくていいと思う。
小さな礼拝堂で向かい合う二人の男女を眺め、私は心から二人を祝福する。
────若干二名ほど、複雑な表情を浮かべている者が居るが。

 ニクスも、レーヴェンもまだ未練ある感じかぁ。
まあ、こればっかりはどうしようもないよね。

 未だに浮いた話一つない高スペック男子達を見やり、私は内心肩を竦めた。
『ワンチャン、二人とも一生独身かもね』と考えながら。
さすがに責任感の強いレーヴェンは後継ぎを産むために結婚しそうだが、ニクスは親戚から養子を取るなり何なりして独身を貫きそうだ。
結婚してしまったら、朱里の帰ってくる場所が無くなると思って。
心配せずとも、離婚の可能性はなさそうだが。
『リエートと超ラブラブだもん』と考える中、牧師役の教皇聖下が口を開く。

「では、誓いのキスを」
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