お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あっという間に周囲を虜にするなんて、凄いじゃない」

「さすが、リディアだ」

「初めてにしては、よくやった方じゃないか」

 口々に乾杯の挨拶を褒める公爵家の面々は、私の頭を撫でたり肩をポンポンと叩いたりする。
それに対して笑顔でお礼を言っていると、周囲の人々が固まった。

「えっ?グレンジャー公爵家って、あんなに仲良かったっけ?」

「おい、気難しい公爵様まで笑っていらっしゃるぞ」

「仲のいい家族を演じている……訳では、なさそうね」

「ということは、リディア様って……公爵家にとって、かなり重要な存在?」

「「「「!!」」」」

 とある貴婦人の一言で、挨拶を後回しにしていた一部の招待客が列へ飛び込んだ。
『これは何としてでも、関わりを持たなければ!』と奮起し、キラリと目を光らせる。
打算だらけの行動ではあるものの、軽んじられるよりはマシなのでスルー。
そもそも、貴族同士の付き合いなんてこんなものだ────と、兄に教えられていたから。
世間知らずの私を心配してか、色々アドバイスしてくれていた。
なので、あまり動揺していない。
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