お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「さて、そろそろ招待客を相手するか」

 そう言って、父は後ろの席へ座るよう指示してくる。
家族分用意された椅子を前に、私達は一旦雑談をやめた。
事前に決められた配置を思い出しながら席に腰掛け、招待客達と向き合う。
すると、列の先頭に並んでいる人から順番に挨拶とプレゼントの献上を始めた。

 なんだか、ちょっと……新鮮ね。
誕生日パーティーを開いて、招待客からプレゼントをもらうなんて初めての経験だから。
規模も値段も桁違いだけど、こうやってお祝いされるのは素直に嬉しい。

 少し離れた場所にどんどん積まれていくプレゼントの山を前に、私は少し頬を緩める。
あくまで祝われているのはリディアだが、それでも温かい気持ちになった。
────と、ここで一人の少年がプレゼント片手に歩み出る。
すると、兄の表情が曇った。

「お前に招待状は送ってない筈だが」

「父上と母上の代理で来たんだよ」

「親に頼まれたからといって素直に来るような奴じゃないだろ、お前は」

 『何を企んでいるんだ?』と怪訝そうに眉を顰める兄は、ジロリと相手を睨みつける。
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