お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
不信感を前面に出す彼に対し、相手の男性はやれやれと頭を振った。
「酷い言い草だな。まあ────全くもって、その通りだけど。今日はお前の妹がどんな奴なのか知りたくて、来たんだよ」
『親に頼まれたから、来た訳じゃない』と素直に認め、彼はこちらに向き直る。
と同時に、騎士の礼を取った。
「誕生日おめでとう、リディア。俺はクライン公爵家の次男────リエート・ライオネル・クライン。ニクスとは、幼馴染み兼親友だ」
「腐れ縁の間違いだろう。勝手に嘘を吹き込むな」
『お前と親友になった覚えはない』とバッサリ切り捨て、兄はふんぞり返る。
フンッ!と鼻を鳴らしてそっぽを向く彼に、クライン令息は『ひでぇ〜』と文句を言った。
────が、これはいつものじゃれ合いみたいなものらしく、どちらも本気で嫌がっている様子はない。
なんだかんだ言って仲の良さそうな二人を前に、私はふと前世の記憶を振り返る。
あっ、思い出した。彼は────『貴方と運命の恋を』に出てくる、攻略対象者の一人だ。
ゲームのパッケージイラストと印象が全然違ったから、名前を聞くまで気づかなかったけど。
「酷い言い草だな。まあ────全くもって、その通りだけど。今日はお前の妹がどんな奴なのか知りたくて、来たんだよ」
『親に頼まれたから、来た訳じゃない』と素直に認め、彼はこちらに向き直る。
と同時に、騎士の礼を取った。
「誕生日おめでとう、リディア。俺はクライン公爵家の次男────リエート・ライオネル・クライン。ニクスとは、幼馴染み兼親友だ」
「腐れ縁の間違いだろう。勝手に嘘を吹き込むな」
『お前と親友になった覚えはない』とバッサリ切り捨て、兄はふんぞり返る。
フンッ!と鼻を鳴らしてそっぽを向く彼に、クライン令息は『ひでぇ〜』と文句を言った。
────が、これはいつものじゃれ合いみたいなものらしく、どちらも本気で嫌がっている様子はない。
なんだかんだ言って仲の良さそうな二人を前に、私はふと前世の記憶を振り返る。
あっ、思い出した。彼は────『貴方と運命の恋を』に出てくる、攻略対象者の一人だ。
ゲームのパッケージイラストと印象が全然違ったから、名前を聞くまで気づかなかったけど。