お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 どういう訳か、皆よそよそしいのよね。
私の扱いに困っているというか……。
家族に関しては、一切接点なしだし。
執事曰く、父の公爵は仕事で遠征中。母の公爵夫人は体調不良により、自室で療養しているとのこと。また、兄の小公爵は次期当主教育でずっと部屋に籠っているらしい。

 『一応、同じ家の中には居るらしいけど』と思いつつ、私は身を起こす。
少し乱れた髪を手櫛で整え、ピョンッとベッドから飛び降りた。

「このままじゃ、ダメよね。ここであれこれ考えていても、何も始まらない。行動あるのみよ」

 現状打破を決意し、私はキュッと小さく手を握る。
と同時に、顔を上げた。

「手始めに────兄のニクス・ネージュ・グレンジャーに会いに行きましょう」

 ─────という宣言の元、私は小公爵の自室へ赴く。
ちょっと緊張しながら扉を見上げ、恐る恐るノックしてみた。
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