お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「すみません。少し取り乱しました」

 どこか気恥ずかしそうに謝罪の言葉を口にし、ニコラス大司教は頭を下げる。
『まだ幼い子供の前で何をやっているんだ』と、反省しているようだ。
『大人として情けない』と落ち込みながらも、ニコラス大司教は何とか表情を取り繕う。

「リディア・ルース・グレンジャー、貴方の潜在能力についてお話しします。まずは、魔法関連から────貴方の持つ魔力は約10,800。平均が100なので、脅威的な数値ですね。また、相性の合う属性は氷と風になります」

 『大抵一つしか相性の合う属性はないのに、凄いですね』と言い、ニコラス大司教は微笑んだ。
かと思えば、真剣な顔つきに変わる。

「それから、貴方の持つギフトは────合計四つです。詳細については、杖に刻まれた文章をお読みください。こちらは持ち主である貴方しか読めないようになっているため他人の目から隠す必要はありませんが、念のため厳重に保管してください。これはこの世に一つしかない、貴方のギフトの取扱説明書みたいなものなので」

 『紛失しても、再発行などは出来ません』と注意を促すニコラス大司教に、私はコクンと頷いた。
手に持った銀の杖を見下ろし、『本当に文字が刻まれている』と驚く。
別にニコラス大司教の言葉を疑った訳じゃないが、こうして実物を見ると衝撃が凄かった。

 しかも、本当に読める。全く知らない言語の筈なのに。
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