お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「いいか?合図したら、一斉に飛び込め」

「「了解(分かりました)」」

 了承の意を示す私とリエート卿に、兄は大きく頷くと真っ直ぐ前を向いた。

「それじゃあ、行くぞ。三、二、一────飛び込め!」

 兄の号令と共に、私達はゲートを潜り抜ける。
手を繋いでいたおかげか、誰一人欠けることなく無事転移でき────急降下する。
予定通り座標を上空へ固定したため、私達の体は真っ逆さま。
『これがスカイダイビング』と目を輝かせる私を他所に、ゲートはパッと閉じる。

 通常の魔法と違って、世界の理の揺り返しを受けやすい転移魔法は物質として存在することが出来なかった。
なので、ああして直ぐに消えてしまう。
『存在を固定出来たら、チート過ぎるもんね』と思案しつつ、私は空の旅を楽しむ。
昔からジェットコースターやバンジージャンプに興味があったため、特に恐怖を感じることはなかった。
────が、なんだか気持ち悪くなる。
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