契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
プロローグ
欲しくて欲しくてたまらない気持ちを押し留めて、やっと手にできるこの瞬間をどれだけ待ち望んだことか。
だけど不思議なことに、本当にいいのだろうかという躊躇いもわずかに感じている。
それだけ彼女を大切にしていきたいという想いの現れなのだろう。
彼女と出会ってから、生まれて初めての感情に戸惑うことばかりだ。
だがしかし、それはどれも心地良く幸せを齎す。
「蓮斗さん……?」
ぱっちりとした二重の丸い瞳がじっと俺を見つめる。
その澄んだ瞳の中に自分の姿を見つけ、これから先、彼女の目に一番映る存在でありたいと切に願った。
「澪花」
名前を口にするだけで、愛しさが込み上げる。
「はい」と動いた、薄紅色の小さな唇に口づけを落とした。
わずかに揺れた肩にそっと触れ、腕をすべり手の平にたどり着く。指を絡めて手を握った。
「君の、すべてが欲しい」
自分で口にした言葉で、抑えていたものが一気に解放されたようだった。
そんな俺を、澪花は天使のような笑みを浮かべて抱きしめてくれる。
こんなに誰かを求め、そして愛おしいと思う時が自分にくるなんて、彼女に出会う前の俺は想像すらしなかった。
そう、彼女に出会うまでは……。恋だの愛だの、関心もなかった。