契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
蓮斗さんは車寄せでホテルスタッフに車を任せると、私の腰に手を回しエスコートしてくれる。
慣れた足取りでエレベーターに乗り込み、向かったのはホテル最上階のレストラン。
蓮斗さんの姿が見えると、レストランの黒服はこちらに向かって頭を下げる。
もうここに訪れることが伝えられていた様子で、上着を預かられるとスムーズに席へと案内された。
天井の高い解放感のある空間。ネイビーのテーブルクロスの掛けられた客席が並ぶフロアを進んでいくと、一面のガラス張りが広がる。向こうには、夜の闇に溶け込む海と、時折やってくる船の明かりが見えた。
噂では聞いたことあるけれど、このレストランから夏の花火大会が綺麗に見えるらしく、毎年VIPがこぞって集まっているという。
食事を楽しみながら特等席での花火は格別なのだろう。
「澪花は、普段アルコールは飲まない?」
席につき黒服が立ち去ると、蓮斗さんはリラックスした様子で訊く。
「そうですね……普段は飲みませんが、なにかイベント事では飲みます」
「嫌いだとか、飲めなくはない?」
「はい」
蓮斗さんは「それなら」と手を挙げる。
「嗜む程度に少し飲まないか? 食事に合うワインを用意したい」
「はい」と返事をしたものの、ワインなんて普段飲む機会もなく、私にとってみれば高級なお酒というイメージ。
蓮斗さんが呼ぶとすぐに黒服がやってきてオーダーを受けていく。