契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「引越しの準備は進んでいるか?」
「あ、はい。そこまで運び出すものはないと思うので、衣替え分を含めた衣類と、あとは普段使う身の回りのものくらいだったので」
「服も必要なものも、運び出す手間がかかりそうならすべて用意する。もう手に入らないものなら話は別だが」
「そんなそんな! 大丈夫です、手間なんてことは」
問題ないことをはっきりとアピールする。うっかりしていたら、本当にすべて用意されてしまいそうだ。
黒服が「失礼します」と、私の席の横からグラスにワインを注いでいく。
「あの、蓮斗さんは……?」
「俺は運転があるから。澪花を送り届けないといけないだろう?」
あ、そっか……。
「私だけ飲んだりしていいんですか?」
「気にしなくていい。俺がす勧めたんだ」
自分だけお酒を飲むのは、やっぱり少し抵抗がある。でも、せっかく勧めてもらったのだから、味見程度にいただこうとグラスを手に取った。
「すみません、ありがとうございます。では、少しだけ」
グラスに数センチ入った赤ワインは、濃く渋そうに見える。口元まで運ぶと、芳醇な香りが鼻をくすぐった。ほんの少し口に含むと、フルーティーながらも重みのある甘さが口いっぱいに広がる。