契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「美味しい……」
「意外に飲みやすいだろう?」
「はい。想像していた感じと違いました」
「それはよかった」
蓮斗さんがテーブルの上のナプキンを取って広げだしたのを目に、倣ってナプキンを手に取る。扇のように畳まれていたナフキンを広げて膝の上にかけた。
ほどなくして、前菜プレートが運ばれてくる。
「オマール海老のサラダです」
白いプレートの中央には、殻ごとのオマール海老が載り、そこには野菜が飾られている。
立体的でひとつの芸術作品のような一品目に釘付けにされる。いったい、どこから食べればいいのだろうと悩ましい。
「新居へは、来週にでも引越しを考えているけど、どうかな?」
「はい。問題ないと思います」
「日程を決めたら、業者の手配をしておく。それから、婚姻届も用意しておく。引越しが済んだら、タイミングをみて提出にいこう」
いよいよ本当にこの契約結婚という関係が始まるのだと思いながら「わかりました」と返事をする。
母を助けてもらった代わりに引き受けた蓮斗さんの結婚相手。引き受けたからには、その役割を全うしようと思っている。
私の人生、この先誰かと想い合って、いつかは結婚したいなどという淡い希望も夢もない。
ひとり寂しく終わっていくのがわかっているなら、こんな風に使うのは賢明な判断だ。苦労してきた母のため、なにも惜しくもない。
「いただきます」
ナイフとフォークを手に、オマール海老に取りかかった。