契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


 初めていただくTACHIBANAのフランス料理フルコースは、今まで生きてきた中で一番リッチな食事だった。

 肉料理の和牛ロースのポワレをいただき終えると、デザートが運ばれてくる。


「わぁ、美味しそう」


 デザートプレートが運ばれてきた時だった。
 視界の端で光が弾けるのが見える。


「えっ……?」


 なんだろうと向けた目に映ったのは、夜空に舞う光の大輪。それは次々と上がり、真っ暗な空が明るく輝く。


「花火……どうして、こんな時期に」


 ベリが丘で開催される花火大会は毎年夏季。

 今は真冬二月になったばかりだ。

 こんな時期にこんな打ち上げ花火が上がったことは過去にない。


「失礼します」


 煌めく夜空に見惚れていると、横からスタッフの声が聞こえる。

 私のデザートプレートの向こう、蓮斗さんとの間に、可愛らしいパステルピンク色のホールケーキが置かれる。


「澪花、誕生日おめでとう」


 ケーキの向こうで蓮斗さんが柔和な笑みを浮かべていた。


「え……私の誕生日、知っていたんですか?」

「当たり前だろう」


 ケーキの上には華やかな薔薇のデコレーションと、〝Happy Birthday〟のプレートが載る。

 突然のことに驚いてしまって、すぐにお礼の言葉が出てこない。

 ケーキを見つめ、横で打ちあがり続ける花火に目を向け、やっと蓮斗さんと目を合わせた。

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