契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「すごい……」
ケーキを見つめる目が、いつの間にか潤んでいることにハッとする。慌てて外の景色に目を向けたものの、やっぱり涙が浮かんでしまっていた。
「あっ、私、誕生日って家族にしか祝ってもらったことなくて、だから、こんな……」
言葉にならない。
そんな私の様子を見守る蓮斗さんは、黙ったまま穏やかな表情でこっちを見つめている。
「ありがとうございます」
やっと口にできたお礼と共に、一粒涙が頬を流れてしまう。慌ててそれを隠すように拭った。
自然と笑みがこぼれる。笑顔を作ろうと思ってではなく、気づけばにこりと表情が緩んでいた。
「でも、どうしてこんな……契約結婚の相手に、ここまで……?」
「理由が必要か?」
蓮斗さんは優しい微笑を浮かべたまま訊き返す。
その返答ができないでいると、先に彼の薄い唇が開いた。
「ただ笑ってほしかったから。喜ぶ顔を見られたらと思った」
さっき誕生日おめでとうと言われた時から高鳴りだした鼓動が、大きく激しく音を高める。ドッドッと胸を叩くように鳴り、思わず抑えるように胸に手を置いた。
そんなことを言ってくれるなんて思いもしなかった。
季節外れの花火も、可愛らしいバースデーケーキも嬉しい。
でもなにより、蓮斗さんのその気持ちが嬉しかった。